人生2回目チケット-3話


平時に戻り不安が増す 乱暴な休日であったが 解き放たれた感覚も
残存している反動だろうか?

陰謀制作部から原材料を目的地の第一工場まで安全無感情運転する配達人
勤続41年に狂いはない 何も考えずに進むのみ

いつものように原材料を蝸牛内のリンパ液に振動させ電気信号に変換し
扉を開け 道を渡り 右折 1つ目の信号は青 2つ目の信号は赤 15秒停止し 横断報道を渡り左折 直進200m
スクランブル交差点の南側から進入し北東側の路地に進む この時必ず
交差点の中心まで進み角度を変え進まなければならない 直線で抜けることは会社から禁止されいる。

ロボットに氣を実装できない 氣とはについて解はあったとしても
氣を使い感じることはできない 
いつものように いつも通り 気の抜けた私が求められ
「空がきれいだな」「風が気持ちいな」という花鳥風月を感じることは業務を阻害する物で排除すべきものなのだ。

スクランブル交差点の中心まで22歩 北東側の路地まで19歩 
「あれ? 正八角形ではな・・・」

普段の無氣が不安定で余計な氣が発動された 
ズレた確認は傷口を広げてしまう

心拍が早くなってしまっている まずい
北東の側の路地まで残り7歩なんとか抜ければ修正できる

残り3 2 1

子どもの頃 夏休みにおばあさんの住む里山へ家族で帰省し
開けっ放しの窓から入ってきたオニヤンマ

「お母さん!! おおきなトンボがいる」と驚いた記憶

交差点残り半歩のところで
垂直に建つビルディングに十字を切ったオニヤンマの飛行が始まった

オニヤンマの水平飛行は3日後に開催される駅周辺の祭りの為
吊るし上げられた提灯を真っ二つに切り裂き
舌を出した提灯は息を吹き返す

交差点の淵に溜まり始めた歩行者の旋毛と
スクランブル交差点に引かれた白線の渦と
高さで言えばビルの6階〜7階付近でのオニヤンマの旋回と
私のぐるぐるしている腹の底

「歩行者信号って どっちが止まれでどっちが進めだっけ?」

点滅し始めた信号は どっちだ!!!

御霊前 御怫然 どっちだ!!!

どっちだ どっちだ  善と悪  どっちだ 

可燃・不燃 どっちだ

行くか 戻るか どっちだ

「この国の戦は七割餓死と病死だぜ 玉砕って どっちだ」

真夏のアスファルトに立つ兵隊さんが問いかける

「 勝ち虫のトンボは実は後退飛行も可能だ 」

「風が吹くようにと 祈りに耳を傾けるほどお人好しではない
むしろ 無慈悲に脈打つのがこの星の魅力である」

私の前に立った兵隊さんの三八式を持つ腕の細さに
退却を決断した。

会社はすでに私を処分する段取りを組んで実行しているはず
自宅周辺は警備会社のロボットが配置されて、私を追尾できるハエの大きさほどのドローンも発進している。

しかしこの状態ではさほど遠くに逃げることは無理だ
危険を冒すことになるが、自宅に戻ろう

危機的状況だが「できる」という気持ちが強い

私は身を隠せるだろうと
若者で溢れかえる通りに潜り込んだが
かえって目立ってしまう出で立ちだと
意識を向かせることは出来なかった

できるという直感に疑う余地はない


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