気球


 オズからの知らせは、三日経っても来なかった。

 私はずっと待っていた。けれど何の音沙汰もなかった。

 その三日間、心は暗く沈んでいた。でも、私の友達たちは皆、とても満ち足りていた。

 かかしは、頭の中で素晴らしい考えが浮かんでいると話した。ただ、それを誰にも説明しなかった。どうやら、自分にしか理解できないと分かっていたらしい。

 ブリキの木こりは、歩くたびに胸の中で心臓が鳴るのを感じていた。

「ほら」と彼は言った。「昔、肉でできていたときよりも、今の心のほうが優しくて、繊細なんだよ」

 ライオンは大声で言った。

「地上に怖いものなんてない! あのカリダの軍団でも、一頭でも十二頭でも、かかってくるなら喜んで戦うぞ!」

 みんな幸せそうだった。

 私だけが、取り残されたような気持ちだった。

 家に帰りたいという気持ちは、今までになく強くなっていた。

 四日目の朝、ようやくオズから声がかかった。

 彼はうれしそうに私を呼び、玉座の間へと迎え入れた。

「おかけなさい」と言って、にっこり笑った。「あなたをこの国から連れ出す方法が、たぶん見つかったわ」

「ほんとに? カンザスに帰れるの?」私は身を乗り出して尋ねた。

「うーん、カンザスにたどり着けるかどうかは……正直わからないな」と彼は言った。

「そもそも、どこにあるのか僕には見当もつかない。でもまず、あの砂漠を越えること。それさえできれば、道はきっと見つかるよ」

「どうやって越えるの?」

 私の問いに、彼はしばらく考えたようだった。

「君に僕の考えを話そう」と、少し声を落とした。「僕がこの国に来たときは、気球に乗っていたんだ。空を飛んでね。君もサイクロンに乗ってやってきた。だから砂漠を渡るには、やっぱり空を飛ぶのがいちばんだと思う」

 私は目を見開いた。

「でもサイクロンは作れないでしょう?」

「無理だね。あれは自然の力だ。でも、気球なら僕でも作れるかもしれない」

「ほんとに? どうやって?」

「風船は絹でできていて、内側はガスを閉じ込めるよう接着剤でコーティングする。宮殿には絹がたくさんあるし、それを縫い合わせればいい。でも問題はガスだ。この国には浮かぶためのガスが存在しない」

「じゃあ、意味がないじゃない。浮かばなかったら」

「そうなんだ。でも、浮かばせる方法はもう一つある。熱い空気を入れること」

 彼はそう言ってから、少し表情を曇らせた。

「ただし、熱い空気はガスほど安定していない。冷えてしまえば、気球は砂漠のどこかに落ちる。そうなったら僕たちは……」

「“私たち”? 一緒に来てくれるの?」

「もちろんだよ」とオズは笑った。「もうペテン師でいるのにうんざりなんだ。この宮殿を出たら、すぐにバレてしまう。僕が魔法使いなんかじゃないって。怒った人々に責められて、ずっとこの部屋に隠れていなきゃならない。もう嫌なんだ。君と一緒に空へ行って、また昔のようにサーカスで生きたい」

「一緒にいてくれるなら、心強いです」と私は素直に言った。

「ありがとう。さあ、絹を縫うのを手伝ってくれるかい?」

 彼はそう言って、たくさんの絹の切れ端を持ってきた。私は針と糸を手に取り、彼が切った布を次々に縫い合わせていった。

 まずは薄い緑色。それから濃い緑。そしてエメラルドのような輝きのある緑。

 彼は気球を美しいグラデーションにしたかったのだ。

 切れ端をすべて縫い終えるまでに、三日かかった。

 そのときには、長さ二十フィートを超える大きな緑色の袋が完成していた。

 その袋の底には、小さな穴があいていた。

 そこにオズが筒を差し込み、熱い空気を吹き込めるようにした。

 そして、気球の下につり下げるためのバスケットを編み始めた。

 私はそれを手伝いながら、胸がどきどきしていた。

 本当に空を飛ぶなんて、まだ信じられなかった。でも希望は、確かに目の前にあった。

 四日目の朝、気球は完成した。

 オズは町中に告げさせた。

「偉大なるオズが、空に昇っていかれます! お見送りを!」

 広場には、たくさんの人が集まった。

 かかしも、ブリキの木こりも、ライオンもそろっていた。

 私はオズのそばに立っていた。

 彼は気球の下に大きな火鉢を置いて、その中で火を焚いていた。

 ゆっくりと、風船が膨らんでいく。

 絹がぱんぱんに張って、光を反射していた。

 それを見て、町の人たちは歓声を上げた。

 けれど私は、胸の奥が苦しかった。

 いよいよ、ここを去るときが来たのだと思うと、足がすくんだ。

「さあ、ドロシー」とオズが呼んだ。

「乗るんだよ。気球はもうすぐ浮かぶ」

 私はバスケットに足をかけた。

 でもそのとき――

「トト!」

 姿が見えなかったはずのトトが、どこからか飛び出してきた。

 すぐさま人ごみの中へ走っていってしまった。

 私は思わずバスケットから降りて、トトを追いかけた。

「待って、トト! 戻って!」

 やっと捕まえたときには、気球はもう浮かび始めていた。

 地面を離れ、ゆっくり空に向かって昇っていく。

 私は走った。全速力で駆け戻った。

「待って! オズ! 私も――!」

 でも、間に合わなかった。

 オズは両手を広げて、悲しそうに手を振っていた。

「さようなら、ドロシー!」

 私はただ、地面に立ち尽くしていた。

 空へ舞い上がる緑の気球を、見上げることしかできなかった。

 気球は、まっすぐ空へと消えていった。

 トトが小さく鼻を鳴らした。

 私は膝をついた。

 心の中が、真っ白になっていた。

 ――すべてが、終わってしまった気がした。

 でもそのとき、かかしがそっと私に近づいた。

「大丈夫。僕たちがいるよ」

 彼の声は、風の中でもはっきりと届いた。

 私はうなずいた。

 涙は、こぼれそうでこぼれなかった。

 私はまだ、この国にいた。

 そして、私の物語はまだ終わっていなかった。


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