玉座の間


 緑の眼鏡をかけていても、私たちはまず、この街の輝きに目を奪われる。
 通りには美しい家が並ぶ。どれも緑の大理石でできていて、あちこちにエメラルドがきらめく。

 私たちは同じ緑の大理石の舗道を歩く。
 石のつなぎ目にはびっしりとエメラルドが敷かれて、太陽の光に輝いている。
 窓ガラスは緑色だ。
 街の空も緑色に染まり、太陽の光までが緑色に見える。

 たくさんの人たちが歩いている。男も女も子どもも、みんな緑の服を着ている。
 肌も緑がかっている。
 みんな私たちを不思議そうに見つめる。
 子どもたちはライオンを見ると逃げて、お母さんの後ろに隠れた。
 誰も話しかけてこない。

 通りにはたくさんのお店がある。
 私は、すべての物が緑色だと気づく。
 緑のキャンディーや緑のポップコーンが売られている。
 緑の靴や緑の帽子、いろんな緑の服も並ぶ。
 ある店では男が緑のレモネードを売っていて、子どもたちは緑のペニー硬貨で支払う。

 馬やほかの動物は見かけない。
 男たちは小さな緑色の荷車を押して荷物を運んでいる。
 みんな幸せそうで、満ち足りている。
 裕福な様子も伝わってくる。

 門の守護者が、私たちを街の中心にある大きな建物へ案内する。
 そこが偉大な魔法使いオズの宮殿だ。
 扉の前には、緑の制服を着た兵士が立っている。
 長い緑のひげが印象的だ。

 「見知らぬ人がいる」
 守護者は兵士に告げる。
 「彼らは偉大なオズに会いたいと言っている」

 「入ってください」
 兵士が応じる。
 「伝言をオズに届けます」

 そうして私たちは宮殿の門をくぐる。
 緑の絨毯が敷かれ、エメラルドがちりばめられた家具が並ぶ大きな部屋へと案内された。

 兵士は入室前に、私たちの足を緑のマットで拭かせた。
 座るよう促す。
 「玉座の間のドアに行き、オズにあなたたちがここにいることを伝える」
 「ゆっくり過ごしていてください」

 兵士が戻るまで、私たちはじっと待つ。
 やっと兵士が帰ってきた。

 私は訊ねる。
 「オズに会ったことはありますか?」

 「会ったことはない」兵士が答える。
 「屏風の向こうに座っていた彼に伝言を届けた。
 望むなら謁見を許すと言っていた。
 ただし、一度に一人ずつ、一日に一人だけだ。
 だから数日、宮殿に泊まる必要がある」

 「ありがとう」私は言う。
 「オズは親切ですね」

 兵士が笛を吹く。
 緑色の絹のガウンを着た少女が部屋に入る。
 緑の髪と緑の目を持つ彼女は、深くお辞儀して言う。

 「ついてきて。お部屋へ案内します」

 私はトトを抱え、みんなに別れを告げる。
 少女の後について七つの通路を通り、三段の階段を上る。
 宮殿の正面の小さくてかわいらしい部屋にたどり着く。

 部屋には緑のシルクのシーツとベルベットの掛け布団が敷かれた柔らかいベッドがある。
 中央には小さな噴水があり、緑の香水が空中に漂っている。
 彫刻された緑の大理石の水盤に落ちる。

 窓辺には美しい緑の花が咲いている。
 小さな緑の本が並ぶ棚もある。
 私は本を開く。
 奇妙な緑の絵がたくさん載っていて、思わず笑みがこぼれた。

 ワードローブには緑のドレスがずらり。
 シルクやサテンやベルベットでできている。
 どれも私にぴったりだ。

 「どうぞくつろいで」
 少女はそう言う。
 「何かあればベルを鳴らして。
 オズが明日の朝、お迎えに来ます」

 彼女は私をひとりにして、ほかの仲間たちの元へ戻った。
 みんなも快適な部屋に案内される。

 かかしは部屋の戸口でじっと立ち尽くし、朝まで待った。
 横になっても眠れず、目も閉じられなかった。
 隅にいる小さな蜘蛛をずっと見つめていた。

 ブリキの木こりは肉だった頃を思い出し、習慣でベッドに横になる。
 でも眠れず、一晩中関節を動かしていた。

 ライオンは森の枯れ葉のベッドの方がよかったはずだ。
 部屋に閉じ込められるのは好きじゃない。
 けれど分別がなくて、ベッドに飛び乗り、猫のように丸まって眠った。
 喉を鳴らしながら。

 翌朝、朝食の後、緑の少女が私を迎えに来る。
 緑の錦織りのサテンの美しいガウンを着せてくれた。
 私は緑の絹のエプロンを羽織り、トトには緑のリボンを結ぶ。

 二人は偉大なオズの玉座の間へ向かう。

 大きな広間に着く。
 宮廷の紳士淑女たちがたくさんいる。
 豪華な服をまとい、おしゃべりに夢中だ。
 毎朝ここで待っているらしい。
 オズに会うことは許されない。

 私が入ると、みんなが不思議そうに見つめる。
 一人がささやく。

 「本当に恐ろしいオズの顔を見るのか?」

 「もちろん」私は答える。
 「彼が私に会ってくれるなら」

 「会うさ」
 伝言を届けた兵士が言う。
 「でも彼は会いたがる人が嫌いだ。
 最初は怒って、君を元の場所に戻せと言った。
 君の容姿を聞き、銀の靴の話をすると興味を示した。
 額の傷跡の話で、君を招き入れる決心をした」

 そのときベルが鳴る。
 緑の少女が私に言った。

 「合図よ。
 一人で玉座の間に入らなければならない」


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