黄色い道が、少しずつひどくなってきた。
石が盛り上がったり、割れていたり、ぽっかり穴があったりして、足元ばかりを見て歩くことになった。
かかしは、何度もつまずいた。
まっすぐ前しか見えない彼の足は、穴の端に入ったり、欠けたレンガに引っかかったりして、何度も前のめりに倒れた。
でも彼は、痛がらなかった。
私はそのたびに彼を助け起こした。彼はいつも笑って、「今のはうまく転んだと思うんだけど」と、照れたように言うのだった。
あたりの風景も、だんだん変わっていった。
畑は荒れ、家も果樹も見当たらない。
どこまでも続く静けさのなかで、ただ道と私たちだけが動いていた。
ちょうどお昼頃、小川のそばに座った。
私はかごからパンを取り出し、かかしにも差し出した。けれど、彼は首を振った。
「僕は、空腹にならないんだ」と、穏やかに笑って言った。「それに、食べようとしたら藁が飛び出して、頭の形が崩れてしまうかもしれないしね」
私はうなずいた。
口はあるけど、食べ物のためじゃない――そういうこともあるんだと思った。
それから、パンをかじりながら、かかしに言われるまま、自分のことを話した。
カンザスのこと。
すべてが灰色だったこと。
そして竜巻に巻き上げられて、この国に来たこと。
彼は、熱心に聞いていた。
私の言葉のひとつひとつを、まるで藁の奥まで吸い込むように。
「でも、そんな場所に、なぜ戻りたいのか……僕にはよく分からない」と、かかしは言った。
「それは……あなたに頭がないからよ」
私はそう言って、草の上にかごを戻した。
「どんなに美しい国よりも、どんなに灰色でも、自分の家がいいの。
家って、そういうものよ。そこにしか居場所がないの」
かかしはしばらく黙ってから、ため息をついた。
「なるほど……。でも、僕の頭が藁でよかったかもしれない。もしカンザスの人たちもみんな藁だったら、誰も戻りたがらなくなって、カンザスは空っぽになってしまうからね」
彼は肩をすくめて笑った。私はその言い方が好きだった。
「じゃあ、今度はあなたのことを聞かせて」と、私はお願いした。
彼は少し困ったように私を見て、口を開いた。
「僕の人生は、本当に短いんだ。作られたのは、おとといだった。
でも、ちゃんと耳から始まったんだよ。耳に色を塗ってもらって、最初に聞いたのは、農夫の『この耳どう?』って声だった」
私は思わず笑ってしまった。
彼はそれを気にせず、どんどん話してくれた。
「もう一人のマンチキンが『まっすぐじゃないね』って言ったら、農夫は『気にするな、耳に変わりはない』って答えてた。面白いよね。
それから目を描いてもらったんだけど、目ができた瞬間、世界が見えたんだ。農夫も、その友達も、全部。全部が初めてのことで、夢みたいだった」
私は黙って聞いていた。
彼の声はとても静かで、でも楽しそうだった。
「片目が終わったら、農夫は『もう一方は少し大きくしよう』って言ってね。そうしたら、もっとよく見えるようになった。
それから鼻、口、体、腕、足。ぜんぶ描かれて、頭につけられたとき、僕は“自分は人間なんだ”って本気で思ったんだよ」
私は、かかしの横顔を見た。
口の端が少し上がっていて、まるで誇らしげに笑っているようだった。
「それから僕は、とうもろこし畑に連れて行かれて、高い棒の上に座らされた。
そこでカラスを追い払うのが仕事だったんだ。……君が、僕を見つけてくれるまではね」
私は、小さくうなずいた。
そのときの彼の顔が、ふと浮かんできた。藁でできた、でも不思議と寂しげじゃなかった顔。
その横に、今も彼がいることが、何だかとても心強く思えた。