恐ろしい獣


 「カリダって何?」

 思わず聞き返した。自分でも声が震えていた。

 ライオンが低く唸るように言った。

 「熊みたいな体に、虎のような頭を持った怪物だ。爪は鋭く長くて……私を真っ二つに裂くのなんて、トトを踏み潰すのと同じくらいたやすい。だから、怖いんだよ。心底」

 無理もないと思った。

 「きっと恐ろしい獣たちなのね」

 そう返すと、ライオンが何か言いかけた。

 でもその時、道の先に新しい淵が見えた。深くて、広い。最初の一目で、ライオンは飛び越えられないとわかった。

 私たちは立ち止まり、座り込んで考え込んだ。どうしたらいいのか、誰も言葉が出なかった。

 しばらくして、かかしがぽつりとつぶやいた。

 「ほら、溝のそばに大きな木がある。ブリキの木こりがそれを倒してくれたら、橋代わりになる」

 ライオンが笑った。

 「脳みそがないなんて嘘じゃないか。本物の知恵じゃないか」

 木こりはすぐに動き始めた。斧の音が、森にリズムを刻んだ。

 あっという間に木は切りかけられ、ライオンが前脚で押すと、大木はゆっくりと傾いて、反対側に倒れた。枝が音を立てて向こう岸に届いた。

 そのとき、鋭いうなり声が聞こえた。私たちは反射的に顔を上げた。

 二匹の巨大な獣が、こちらに向かって走っていた。

 熊のような体、虎のような頭。ライオンが震えながら言った。

 「カリダだ……!」

 「早く!」かかしが叫んだ。

 私はトトを抱き上げて、木の上を走った。木こりが続き、かかしも渡った。

 後ろではライオンが踏みとどまっていた。怖いはずなのに、私たちを守ろうとしている。

 突然、彼が吠えた。とてつもなく大きくて、激しい咆哮だった。

 私は思わず悲鳴をあげた。かかしは後ろにひっくり返った。獣たちでさえ立ち止まり、目を見開いていた。

 でもすぐに、彼らは思い出したように走り出した。ライオンより大きくて、数でも勝っていた。

 ライオンは木を渡り、振り返った。カリダたちも続いた。止まる気配はなかった。

 「もうだめだ」ライオンが私のそばで息を整えた。「きっと奴らは爪で引き裂く。でも、君の前に立つ。私が生きている限り、守る」

 そのとき、かかしが声を上げた。

 「待って!」

 考えた末に、かかしは木こりに言った。木の手前を切って、橋ごと落とそうと。

 木こりが斧を振るう。あと少しで渡りきる、というところで、木が音を立てて傾いた。

 次の瞬間、獣たちは悲鳴をあげながら落ちていった。溝の底に砕け散った音が、耳の奥に残った。

 ライオンが大きく息を吐いた。

 「もう少し、生きられそうだ。生きてるのは……悪くないな。怖かった。心臓がまだドキドキしてる」

 木こりがポツンとつぶやいた。

 「ああ……鼓動する心臓があったらなあ」

 私たちはその夜、森を出たくてたまらなくなった。夢中で歩いた。私は疲れて、ついにライオンの背に乗った。

 道が開け、木々がまばらになった頃、目の前に川が流れていた。

 向こう岸には、美しい田園地帯が広がっていた。緑の草と、色とりどりの花。果物の実った木々。そして、その中を黄色い道が走っていた。

 私は目を奪われた。

 「どうやって渡ればいいの?」

 「簡単だよ」かかしが答えた。「ブリキの木こりが、いかだを作ってくれる」

 木こりはすぐに斧を取り、小さな木を切り始めた。

 私は果物の木を見つけて、夢中で食べた。ナッツばかりだった一日が、やっと報われた気がした。

 けれど、いかだ作りは夜になっても終わらなかった。

 私たちは森の中の木陰を見つけ、そこで眠った。私は夢を見た。

 エメラルドの都の夢。
 そして、オズに会えたら、きっと家に帰れる――そんな夢。


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