それでも会いに行く


 「なんだか、すごく変な話ね」
 私はそう言って首をかしげた。
「でも、それでも行かなくちゃ。オズに会わないと、ここまでの旅が全部――無駄になるもの」

 「なぜ、そんなに恐ろしいオズに会いたいんだい?」
 男が真顔で私たちを見た。

 「僕は脳がほしいんだ」
 かかしが、まるでずっと温めていた希望を打ち明けるように言った。

 「それなら簡単だよ。オズは頭脳を余るほど持ってるから」
 男は肩をすくめた。

 「僕は心がほしい」
 ブリキの木こりは、静かに言った。

 「それもオズなら平気さ。どんな形の心でも取り出せるって聞いたことがある」

 「私は勇気をもらいたいのです」
 臆病なライオンは少し声を低くして言った。

 「だったら、玉座の横の“勇気の壺”を開けてくれるさ。金の蓋がしてあるけどね、あふれないように」

 「私は、カンザスに帰してもらいたいの」
 そう言うと、男はちょっと驚いた顔をして私を見た。

 「カンザス? どこだそれ?」

 「……わからない。でも、そこが私の家なの。だから、どこかにあるはず」
 声が少しだけ震えた。

 「まあ、オズなら何でもできるって言うし、きっと見つけてくれるだろうさ。……ただ、まずは会わなきゃいけない。でもそれが難しい。彼は自分のやり方があるから、誰でも会えるわけじゃないんだ」

 男はそう言いながら、トトの頭をちょんと撫でた。
「で、君は何が欲しいんだ?」

 トトは黙って、ただ尻尾を振るだけだった。
 喋らなかった。いつものように。

 ちょうどそのとき、女の人が「夕食ができたよ」と声をかけた。
 みんなテーブルについた。

 私はオートミールとスクランブルエッグと、ふわふわの白パンを食べた。
 ほっとする味だった。
 ライオンも、オートミールを少し口にしたけれど――

「馬の食べ物じゃないか」と言って、あまり嬉しそうじゃなかった。

 かかしとブリキの木こりは、いつも通り食べなかった。
 トトは全部をちょっとずつ食べて、とても満足そうだった。

 女の人は私に寝床を貸してくれた。
 トトはすぐ横で丸くなった。

 ライオンは、私が邪魔されないようにと部屋の扉の前に座っていた。
 かかしと木こりは部屋の隅に立ったまま、ずっと静かにしていた。
 もちろん、眠ることはなかったけれど。

 夜が明けると、私たちはすぐに出発した。
 まもなく、空に緑色の光が見えてきた。

「あれが、エメラルドの都だと思う」
 私はつぶやいた。

 緑の輝きはどんどん明るくなった。
 旅の終わりが近づいているような気がした。

 午後になって、私たちはその巨大な壁にたどり着いた。
 壁は高くて分厚くて、まばゆいほど緑色に塗られていた。

 黄色いレンガの道の終点には、大きな門があった。
 門にはたくさんのエメラルドが飾られていて、太陽の光にきらめいていた。
 かかしの目でさえ、その光にくらくらしていた。

 門の脇にあったベルに私はそっと触れた。
 中から銀のような音が響いた。
 そして、門がゆっくりと開いた。

 私たちは中に入り、高い天井の広い部屋に出た。
 壁も床も、すべてがエメラルドで輝いていた。

 そこには、小さな男の人が立っていた。
 マンチキンと同じくらいの背丈で、全身緑色の服を着ていた。
 肌もほんのり緑だった。
 隣には、大きな緑の箱があった。

 男は私たちをじっと見て言った。
「エメラルドの都で、何を望まれるのですか?」

「オズに会いに来ました」
 私は答えた。

 男は驚いた顔をした。
 しばらく考え込んで、それから言った。

「オズに会いたいなんて……何年ぶりだろう。
 彼はとても強くて、恐ろしい。
 くだらない用事や、浅はかな気持ちで来た者を、
 怒りの力で跡形もなく消し去ったこともある」

「でも、私たちの願いは、そんなものじゃないんだ」
 かかしがまっすぐに答えた。
「大切なことだから。
 それに、オズは良い魔法使いだと聞いています」

「その通りだ」
 男は静かにうなずいた。
「オズはこの都を、賢く治めている。
 だが、誠実でない者には恐ろしい存在だ。
 私は門の守り人だ。
 お前たちが本当に会いたいのなら、宮殿へ案内しよう。
 ただし――まず眼鏡をかけなければならない」

「どうして?」

「エメラルドの都の輝きは強すぎる。
 眼鏡なしでは、目がくらんでしまう。
 都の人々も昼夜ずっと眼鏡をかけている。
 それが、オズの命令なんだ。
 鍵を持っているのは、私だけだ」

 男は箱のふたを開けた。
 中には、いろんな大きさと形の眼鏡がぎっしり詰まっていた。
 どれも緑色のレンズがついていた。

 男は私の顔を見て、ちょうど合いそうな眼鏡を選び、
 そっとかけてくれた。

 その眼鏡には金のバンドがあって、
 後ろで鍵をかけられた。
 それで私は、もう自分では外せなかった。

 でも、まぶしさで目が痛くなるのは嫌だったから、何も言わなかった。

 かかしにも、ブリキの木こりにも、ライオンにも。
 そして、トトにさえも緑の眼鏡がかけられた。
 すべての鍵は、男の首から下がる鎖につながっていた。

 最後に、守り人の男自身も眼鏡をかけ、
「さあ、宮殿へ案内しましょう」と言った。

 彼は壁にかかっていた金の鍵を取って、
 別の門を開けた。

 私たちはその門をくぐり、
 ついに、エメラルド・シティの街の中へと踏み込んだ。


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