パンの日とサーカスの日

カイの家は王国のはずれ、小さな丘のふもとにあった。窓を開けると、広場の鐘の音が風に乗って届く。今日は週に一度の「パンの日」だ。 鐘が三回鳴ると、人々がわらわらと通りに出てくる。大きなかごを抱えた女の人、袋を下げた子どもた … 続きを読む

王女とジョーカー

もう少し歩いたところで、私は見たこともないほど華やかに着飾った女の子に出会った。まだ若い王女さまのようだった。その子は、私たちを見た瞬間にぴたりと足を止め、そして逃げ出そうと身を翻した。 私はもっと彼女をよく見たいと思っ … 続きを読む

遠き背中

 先生は、なにも言わない人だった。  勝っても、負けても、誰かをほめることも、怒ることもなかった。ただ、じっと地図を見つめて、黙ったまま、静かに前を歩き続ける。  ぼくは、そんな先生の弟子だった。  名前を呼ばれたことも … 続きを読む

火の目の敵

 ローマに戻る道は、兵の靴で踏み固められていた。  その上に、ぼくも立っていた。ようやく兵に選ばれたばかりの、十八歳の青年だ。名前はルキウス。代々ローマに仕えてきた家の出で、父も祖父も軍人だった。  でも、戦争の本当の顔 … 続きを読む

象の足あと

 その朝、山は静かだった。  けれど、ただの静けさじゃない。鳥の声も、風の音も、雪を踏む音も――すべてが、息をひそめていた。  ぼくは、ハンニバル将軍の軍に従う歩兵だった。出身はヒスパニア。けれど今は、隊長の命令で、寒さ … 続きを読む

陶器の国

木こりが森の中から見つけてきた木で、はしごを作っているあいだ、私はくたびれて、草の上に横になった。いつの間にか眠ってしまっていた。 ライオンも丸くなって寝ている。トトはそのそばで体を小さく丸めていた。 かかしは、木こりの … 続きを読む

夢のあとに

 それから、たくさんの時間がながれました。  海の波は何も知らないように、今日も岸にやさしく打ちよせています。  青い空には、白い雲がゆっくりと流れていきます。  人びとは忘れていきます。  けれど、父・ダイダロスだけは … 続きを読む

はばたき

 空をとぶ、というのはどんな感じだと思いますか?  風が体をおしてくれるように感じて、まるで空そのものが、あなたを受け入れてくれているみたいです。  地上はどんどん小さくなり、遠くの山も、青くひかる海も、ぜんぶ見わたせま … 続きを読む

迷宮と翼

 クレタ島という、青い海にかこまれた美しい島に、一人の男が住んでいました。  名前はダイダロス。とても頭がよく、どんなものでも作ることができる発明家です。  ある日、島の王さま――ミノス王がダイダロスをおよびになりました … 続きを読む

森の中

 朝、私は可愛い緑の少女にキスをして別れを告げた。 そして、門まで一緒に歩いてきてくれた緑のひげの兵隊と、しっかり握手を交わした。  門の守り手は、私たちの姿を見て驚いていた。「こんなに美しい都を離れて、また旅に出るなん … 続きを読む