パンの日とサーカスの日 2025年9月21日2025年8月14日 by NMz カイの家は王国のはずれ、小さな丘のふもとにあった。窓を開けると、広場の鐘の音が風に乗って届く。今日は週に一度の「パンの日」だ。 鐘が三回鳴ると、人々がわらわらと通りに出てくる。大きなかごを抱えた女の人、袋を下げた子どもた … 続きを読む
王女とジョーカー 2025年9月21日2025年8月4日 by NMz もう少し歩いたところで、私は見たこともないほど華やかに着飾った女の子に出会った。まだ若い王女さまのようだった。その子は、私たちを見た瞬間にぴたりと足を止め、そして逃げ出そうと身を翻した。 私はもっと彼女をよく見たいと思っ … 続きを読む
遠き背中 2025年9月21日2025年8月3日 by NMz 先生は、なにも言わない人だった。 勝っても、負けても、誰かをほめることも、怒ることもなかった。ただ、じっと地図を見つめて、黙ったまま、静かに前を歩き続ける。 ぼくは、そんな先生の弟子だった。 名前を呼ばれたことも … 続きを読む
火の目の敵 2025年9月21日2025年8月3日 by NMz ローマに戻る道は、兵の靴で踏み固められていた。 その上に、ぼくも立っていた。ようやく兵に選ばれたばかりの、十八歳の青年だ。名前はルキウス。代々ローマに仕えてきた家の出で、父も祖父も軍人だった。 でも、戦争の本当の顔 … 続きを読む
象の足あと 2025年9月21日2025年8月3日 by NMz その朝、山は静かだった。 けれど、ただの静けさじゃない。鳥の声も、風の音も、雪を踏む音も――すべてが、息をひそめていた。 ぼくは、ハンニバル将軍の軍に従う歩兵だった。出身はヒスパニア。けれど今は、隊長の命令で、寒さ … 続きを読む
陶器の国 2025年9月21日2025年8月3日 by NMz 木こりが森の中から見つけてきた木で、はしごを作っているあいだ、私はくたびれて、草の上に横になった。いつの間にか眠ってしまっていた。 ライオンも丸くなって寝ている。トトはそのそばで体を小さく丸めていた。 かかしは、木こりの … 続きを読む
夢のあとに 2025年9月21日2025年8月1日 by NMz それから、たくさんの時間がながれました。 海の波は何も知らないように、今日も岸にやさしく打ちよせています。 青い空には、白い雲がゆっくりと流れていきます。 人びとは忘れていきます。 けれど、父・ダイダロスだけは … 続きを読む
はばたき 2025年9月21日2025年8月1日 by NMz 空をとぶ、というのはどんな感じだと思いますか? 風が体をおしてくれるように感じて、まるで空そのものが、あなたを受け入れてくれているみたいです。 地上はどんどん小さくなり、遠くの山も、青くひかる海も、ぜんぶ見わたせま … 続きを読む
迷宮と翼 2025年9月21日2025年8月1日 by NMz クレタ島という、青い海にかこまれた美しい島に、一人の男が住んでいました。 名前はダイダロス。とても頭がよく、どんなものでも作ることができる発明家です。 ある日、島の王さま――ミノス王がダイダロスをおよびになりました … 続きを読む
森の中 2025年9月21日2025年8月1日 by NMz 朝、私は可愛い緑の少女にキスをして別れを告げた。 そして、門まで一緒に歩いてきてくれた緑のひげの兵隊と、しっかり握手を交わした。 門の守り手は、私たちの姿を見て驚いていた。「こんなに美しい都を離れて、また旅に出るなん … 続きを読む