魔女のおわり

邪悪な魔女がまた外を見た。カラスたちが山のように倒れているのを見て、怒りが体の中で燃えあがった。彼女は銀の笛を三度吹き鳴らす。高く響く音が、静かな空気を切り裂いた。 すぐに、空の彼方から羽ばたきの音が大きくなった。黒い蜂 … 続きを読む

初陣

兵士の口ひげは、まるで草のように濃くて緑色だった。その兵士が案内してくれる道は、エメラルドの都の中でも特別にきらめいて見えた。 わたしたちはゆっくりと歩き、門の守護者の家へ向かった。彼は黙って、わたしたちの眼鏡の鍵を開け … 続きを読む

静けさの高原にて

青白い文字盤が、黙って「第二時」を示していた。その振り子が、風のない静けさの中、かち、かち、と野原に刻む音だけが響いている。汽車も止まり、草の葉すら動かない。すべてが、透明な沈黙の中にあった。 その静寂を、かすかに破るも … 続きを読む

ウィンキーの国へ

 ブリキの木こりが戻ってきた。 とても落ち込んだ顔をしていた。  「……あんなの、見たことないよ」 しばらく黙ったあとで、ようやく言った。 「火を吹くような、恐ろしい野獣だったんだ。毛がもじゃもじゃで、目が五つもあって… … 続きを読む

神の召しにこたえて

 「まあ、あの鳥……からすかしら」  少女の声が、そっと車窓の外へ流れた。  「からすじゃないよ。みんな、かささぎさ」  カムパネルラが、静かに言い直す。その言い方に、叱るような色が混じっていて、ジョバンニは思わず笑った … 続きを読む

あとがき

 この手記を書き綴った男を、自分は直接には知らない。  ただ、その手記に登場する、京橋のスタンド・バアのマダムらしき人物を、自分はわずかに知っていた。  小柄な女だった。  顔色が悪く、目尻は細くつり上がっていた。  鼻 … 続きを読む

見えない姿

 朝になると、あの緑のひげの兵士が、かかしのところにやって来た。 「オズがお呼びです。一緒に来てください」  かかしは、わらの体をぎこちなく揺らしながら立ち上がった。 そして、兵士のあとをついて、玉座の間へと入っていった … 続きを読む

燐光の川辺にて

 ごとごとと音をたてながら、汽車は燐光の川辺を走っていた。 川の水面はきらきらと揺れ、向こうの窓には野原が広がっていた。  それは幻燈のようだった。 百も千もの三角標が、大きさもさまざまに、野の上に立っていた。 大きなも … 続きを読む

第三の手記 18

 「痛くないんですか?」  ヨシ子は、おどおどしたようすで、自分にたずねました。  「それあ、痛いさ」  そう答えて、自分はふざけた調子で続けました。  「でも、仕事の能率をあげるには、いやでも、これをやらなきゃいけない … 続きを読む

オズの試練

 小さな扉を押した。 ほんのり緑の光がこぼれる。 胸を張って一歩。空気が冷たい。  円い大広間に出た。 壁も床も天井も――すべて大粒のエメラルド。 頭上には太陽みたいな大きな灯り。 宝石が一斉に火花を散らす。目が焼けそう … 続きを読む