鼠の恩返し

 「もう、黄色い道からそんなに離れていないと思うんだ」 かかしが、眠るドロシーのそばに立って言った。「川に流された場所のあたりまで、たぶん来てるはずだよ」  そのときだった。 ブリキの木こりが何か言おうとした瞬間、低いう … 続きを読む

ケシの花の眠り

 「私、ドロシーっていうの」  そう言いながら、私は二人の仲間を順に見た。  「それで、こちらがブリキの木こり。こっちは臆病なライオン。今、私たち、エメラルドの都へ行くところなの」  コウノトリは首をかしげた。あきらかに … 続きを読む

流されて、離れて、なお──

 朝の空気はひんやりして、なのに胸の奥が明るかった。 目を覚ましたとき、体は軽く、目に映る世界はすべて柔らかく輝いて見えた。  私は桃とプラムをひとつずつ摘んだ。昨夜、木のそばで見つけたやつ。 それを少しだけ、ゆっくりと … 続きを読む

恐ろしい獣

 「カリダって何?」  思わず聞き返した。自分でも声が震えていた。  ライオンが低く唸るように言った。  「熊みたいな体に、虎のような頭を持った怪物だ。爪は鋭く長くて……私を真っ二つに裂くのなんて、トトを踏み潰すのと同じ … 続きを読む

大きな溝

 その夜、私たちは森の中で眠ることにした。 まわりに家は見あたらない。 探すのもやめて、静かな木の下に落ち着く。  枝は高くて広く、葉が私たちを覆ってくれた。 露は落ちてこなかった。 葉が屋根のように、雨の気配を遮ってく … 続きを読む

木こりの涙

 ライオンが、尻尾で目元をぬぐった。涙がにじんでいた。 「分かっています」「それが悲しいんです」「だから私は不幸なんです」「でも……危ないことがあると、胸が、どくどくするんです」  私はそっと息をのんだ。木こりを見た。 … 続きを読む

吠えるけれど、震えていた

 森の中は、とても静かだった。 私たちは、深く深く、その奥を歩いていた。  足もとの道は、まだ黄色いレンガでできていたけれど、枯れ枝や落ち葉がいっぱい落ちていて、とても歩きにくかった。足を取られないように気をつけながら、 … 続きを読む

さびついた声

 目を開けると、木のすき間から光が差し込んでいた。  風が止まっていて、葉のざわめきもなかったけれど、遠くでトトの足音がしていた。何か小さな動物でも追いかけているのかもしれない。姿は見えなかったけれど、音だけはやけに元気 … 続きを読む

かかしの願い

 見捨てられるのが、どうしようもなく嫌だった。 たった一人で、あの場所に置いていかれるなんて。  だから、彼らのあとを追おうとした。 でも、足は地面に届かなくて、身体は柱の上に釘づけのまま動かなかった。  生まれたのは、 … 続きを読む