藁の記憶

 黄色い道が、少しずつひどくなってきた。 石が盛り上がったり、割れていたり、ぽっかり穴があったりして、足元ばかりを見て歩くことになった。  かかしは、何度もつまずいた。 まっすぐ前しか見えない彼の足は、穴の端に入ったり、 … 続きを読む

新しい仲間

 かかしは低く、少しハスキーな声で言った。「こんにちは」  ドロシーは驚いた。「話したの?」  「もちろんさ」かかしは答えた。「はじめまして」  「お元気ですか?」とドロシーは丁寧に返した。  「気分はよくない」かかしは … 続きを読む

トウモロコシ畑

 ドロシーは朝ごはんをしっかり食べた。 小さなマンチキンの赤ちゃんをじっと見ていた。 赤ちゃんはトトと遊んでいる。 尻尾を引っ張り、鳴いて、笑い―― ドロシーの顔に楽しそうな笑みが浮かんだ。 トトはみんなにとって珍しい存 … 続きを読む

青の道を行く

 黄色いレンガの道は、すぐに見つかった。 他にも何本か道はあったけれど、それが唯一、見間違えるはずのない輝きを放っていた。  私は銀の靴で、その道を歩きはじめた。 チリン、とかすかに音がした。固くて黄色い路面の上を、軽や … 続きを読む

旅のはじまり

 ひとりになると、ふいに、お腹が空いていることに気がついた。 何か食べないと――そう思って、私は戸棚に向かった。  パンを少しだけ切って、バターを塗る。 その香りがふわりと立ち上がって、胸の奥がくすぐられる。 トトにも分 … 続きを読む

銀の靴と北のキス

 何か、もうひとつ聞きたいことがあった。 けれど、そのときだった。  誰かが声を上げた。いや、皆だった。 マンチキンたちが突然どよめいて、指を伸ばし、家の隅を示していた。  私はそちらを見た。  あの足――あの魔女の―― … 続きを読む

魔女たちの国

 ドアの前に立つと、人々はぱたりと足を止め、ひそひそと囁きあった。何かを怖れているみたいだった。けれど、小柄な老婆が一歩踏み出し、深く頭を下げた。その声は静かで優しく響いた。 「高貴なる魔女よ、マンチキンの国へようこそ。 … 続きを読む

知られざる訪問者

 何かが、私を強く引っ張った。 息が止まるかと思った。目が覚めたとき、まだ夢の中にいる気がして、しばらく動けなかった。  トトの鼻先が、私の頬に触れた。冷たくて、湿っていて、それが現実だった。 私は、やっと息をした。   … 続きを読む

竜巻

 わたしの家は、カンザスの広い草原のただなかにある。 叔父のヘンリーと叔母のエムと三人で暮らしている。 家は小さくて、たった一部屋だけ。 古びたストーブやテーブル、椅子が並んでいて、わたしはその隅っこに小さなベッドをもら … 続きを読む