第二の手記 7 2025年9月21日2025年7月1日 by NMz 淫売婦というものが、自分には、どうしても人間に見えなかった。 女でもなかった。 白痴のように。 あるいは、発狂した生きもののようにしか見えなかった。 けれども、その懐の中では、かえって、まったく安んじることができました … 続きを読む
第二の手記 6 2025年9月21日2025年7月1日 by NMz 美術学校に、はいりたかったのです。 けれど、それは、自分の胸の中で、 ただ、ひそやかに燃えていた希望に過ぎず、 声にして言ったことも、ありませんでした。 父が、許さなかったのです。 父は、自分を官吏にしたいと … 続きを読む
第二の手記 5 2025年9月21日2025年7月1日 by NMz けれども、まだ、その時点では―― 竹一の口から出た「惚れられる」というお世辞は、まったく実現しておりませんでした。 つまり、自分は。 東北のハロルド・ロイド、でしかなかったのでした。 あの戯けた予言が、ぞっとす … 続きを読む
第二の手記 4 2025年9月21日2025年7月1日 by NMz 女は、男よりも更に、道化には、くつろぐようでした。 自分がお道化を演じますと。 男は、さすがに、いつまでもゲラゲラ笑ってはおりませんし。 それに、自分も、男のひとに対して。 調子に乗って、お道化を演じすぎると、 … 続きを読む
第二の手記 3 2025年9月21日2025年7月1日 by NMz その家には、三人だけの家族が暮しておりました。 五十をすぎた小母さん。 そして三十くらいの、眼鏡をかけて、どこか病身らしい、背の高い姉娘。 この人は、いちど他所へ嫁に出て、それからまた家に戻ってきた人で。 自分 … 続きを読む
第二の手記 2 2025年9月21日2025年7月1日 by NMz 自分の――人間恐怖。 それは、以前にもまさって―― なお一層、烈しく。胸の底で、蠕動しつづけておりました。 けれど。 演技は、まるで解き放たれたかのように。 のびのびとして来たのであります。 教室にあっては … 続きを読む
第二の手記 1 2025年9月21日2025年7月1日 by NMz 海の、波打際。 そうは言ってもいいくらいに、海に近い岸辺に―― 真黒い樹肌の山桜が、かなり大きいの、二十本以上も立ち並び。 新学年が始まると、山桜は、褐色の、ねばっこいような嫩葉とともに、 青い海を背景にして、 … 続きを読む
第一の手記 5 2025年9月21日2025年7月1日 by NMz ――お茶目。 自分は、いわゆる「お茶目」に見られることに、見事、成功しました。 尊敬されることから、そっと、のがれることにも――成功しました。 通信簿は、全学科とも十点――けれども、「操行」だけは七点だったり、六 … 続きを読む
第一の手記 4 2025年9月21日2025年7月1日 by NMz けれども、――ああ、学校。 そこでも、自分は、――また、尊敬されかけていたのです。 それが、恐ろしかった。 ――たまらなく、怖ろしかった。 尊敬―― その言葉には、いつも、震えがありました。 自分の定義では … 続きを読む
第一の手記 3 2025年9月21日2025年7月1日 by NMz 自分の父は、東京に用事の多い人でした。 ――上野の桜木町に別荘を持ち、月の大半をそこで暮らしていたのです。 そうして帰郷のたびには、家族はもとより、親戚の者にまで、実におびただしい土産を買って来ました。 ――それ … 続きを読む