天気輪の柱

 牧場のうしろは、なだらかな丘へとつづいていた。 その黒く平たい頂には、大熊星がかかっていた。 ふだんよりも低く、ぼんやりと連なって見える。  ジョバンニは、露に濡れた小さな林のこみちを登っていく。 くらがりの草むら、形 … 続きを読む

銀河ステーション

 背後にあった天気輪の柱が、いつしか三角標のかたちを取りはじめた。 それは蛍のように、かすかに明滅をくりかえし、やがて確かな姿を見せる。 青鋼のような空の野に、静かに立っていた。  そのとき、どこからともなく声が降る。「 … 続きを読む

ケンタウル祭の夜

 口笛に似た、寂しげな吐息のような調子で、ジョバンニは坂を下っていた。 檜の板が黒く並ぶ町の道。かすかに光を吸って、沈黙のように連なっていた。  坂の下に、街燈がひとつ、青白く澄んだ光をたたえて立っていた。 歩くたびに、 … 続きを読む

 ジョバンニが帰ってきたのは、裏町の小さな家だった。 三つ並んだ入口の、いちばん左。  その前には、空き箱に植えられた紫色のケールとアスパラガスがあった。 小さな窓には、日覆いが下りたまま。 光も影も、しずかに止まってい … 続きを読む

活版所

 校門を出ると、桜の木の下に輪ができていた。 カムパネルラを囲んで、七、八人の同級生が肩を寄せ合っていた。 灯籠の青い灯りを流すために、川へ烏瓜を取りに行く相談をしているらしかった。  けれど、ジョバンニは立ち止まらなか … 続きを読む

午后の授業

 「ではみなさん。川だとか、乳の流れだとか言われている、このぼんやり白いものが、本当は何なのか、ご存じですか。」  先生は、黒い星図に白く煙った銀河帯を指しながら、そう問いかけた。  カムパネルラがすっと手を挙げた。   … 続きを読む